Joseph's vision

@josephhvisionが下品な話題を極力控えて出会いやナンパについて140字以内で収まらないネタをつぶやくBlog。

誕生日だったのでナンパした相手におねだりして立ちバックしていたら傍でおっさんが野宿していた -出会う技術⑲-

今日は年に一度の全社的なレセプションが都内のホテルで開催される。
そして奇遇にも年一のこの日が誕生日と被った僕は、はしゃいで面倒な予定を入れることもなく高級ホテルの豪勢な料理に舌鼓を打ちながら、美味い酒でまったりと同僚達と地味に過ごしてやろうとしている。
午前中だけ通常通りオフィスで業務を遂行し、午後から会場へ移動しろと言うが、出社はするもののこういう日は朝から仕事が手につかない。そういう性分なのだろう。なので初めから何かをしようともしていない。自分のことは自分が1番分かっている。
最低限自分のスコープ内で仕事を止めない程度に関係各位にメールを送り、忙しくしているふりをしながらWeb上でサーファーと化した。
10時出社が定時のこのプロジェクトでも昼食は12時。2hで何が出来るというのだ、これくらいのものだろう。

時刻は正午を回り、オフィス内では行ける者は移動しろと、どこまで本気か分からない空気が漂い始める。
僕はそそくさと席を立ち同じチームのメンバーと銀座線で会場へ向かった。
こういう時でもバタバタと山積みの仕事に手を付けながら追われてもいないのに追われているかのような状況を自分で作り、忙しいアピールをするアホが何処にでも一定数はいる。
前日までにある程度済ませて目途をつけたり翌日に回すなどという簡単な事も出来ないのだろうか。
そもそもその日にやらなきゃ死ぬってタスクをどれだけの人々が課せられているだろうか。
仕事を倍に増やしたところで給与が倍になるでもないし手を出すべきものとそうでないものの見極めは適確に出来なければならない。

会場に着くと既に檀上で社長が会社の方針を偉そうに語っていた。まぁ偉いのだから仕方がない。
そしてこんなに社員がいたのかと毎回出席する度に思う。何でその中でこのおっさんが社長になれたのだろう。
大きな会場の前方には語りんぐ中の社長の姿がドアップで映し出されている。どれだけ後ろからでもよく見えるように前方に3面程に大きくプロジェクターで映し出されたおっさんはまるでAppleの新商品発表でもしているようだ。
普段やる気がない僕ではあるが我ながら意外にもこういう場は好きで、社長の言葉に感化されながら、もしかして自分ら世の中背負ってんじゃね?くらいのノリでやる気を漲らせた。


次の人が喋り終わったらようやく食事の時間だ。これに備えた気持ち程のカロリーコントロールのお蔭で既にお腹と背中がくっつきそうだ。
レセプション前のプログラムが全て終わり、別の会場へぞろぞろと移動し食前のドリンクを手に取ったところでスマホが鳴った。オフィスからだ。
悪い予感がした。よりによってグラスに口をつけようとした瞬間に。
電話を取ると案の定業務上のトラブル連絡であった。
取引先の不手際で本日中に急ぎの対応が必要なタスクが課されること必至の状況のようだ。
飲み始めている他の社員を横目にレセプション会場脇にチームのメンバが集まり、「さぁ誰が戻る?」という対応に向けての会話は思いのほかスムーズに皆で戻ろうという意見で一致した。
こういう時の理不尽感が無く可能な限り公平な点はこの会社の良いところかも知れない。
しょうもない会社でしょうもない上司のミスリードを喰らうことは皆無だ。
内心僕はあてにしていた誕生日のご馳走を目前で諦めざるを得ない状況にげんなりしながらも気持ちを切り替えた。


通りに出てタクシーを拾う。
流石に皆のん気に食っては飲んでを楽しむ裏でわざわざ律儀に電車利用する程馬鹿正直ではない。
この時間の246は非常に混んでいて一向に進む気配がないと分かりながら敢えてタクシーを選択した。

想定より大幅に遅くオフィスに戻った僕達は、開き直ってゆっくり取り掛かろうと皆で時間を気にせず淡々と業務に没頭した。
終電覚悟をしていたが幸い金曜の夜のこれからという22時頃には業務を終えオフィスを後にすることが出来た。

踏んだり蹴ったりだったが金曜日だしと皆で軽く飲んで帰ろうと寂れた居酒屋に入った。
誕生日の僕は予定を変更して早く引き上げてオンナと戯れたい思いもあったが、疲労感からかそのまま流れに応じて職場のオトコ共とジョッキを片手に乾杯をしていた。

1hそこらで居酒屋を後にしたがやはり職場の人間と飲むと皆仕事の話しかしない。
自分のことを棚に上げて他人の仕事っぷりをとやかく言うヒトに限って実際は大したことをしていなかったりするからこういう雰囲気は好きになれない。
しかし多少は上の人間にゴマを擂るくらいの方が勤めビトとしては良いのかも知れないし僕も少し真似てみると趣向が変わったりするのかも知れない。

チームの面々と解散し渋谷駅へ向かう。
電車に乗り込む前に駅のホームから最寄駅前の馴染みの串焼き屋に電話を入れた。
「いつものように30分で着くからカウンター空いたら電話頂戴」
ここ最近の僕の金曜夜のお決まりのコースだ。
誕生日の日まで同じパターンを通すはめになるとは、踏んだり蹴ったりにも程があると今更ながら感じた。

最寄駅に到着した頃には小雨がぱらついていたが、傘をささずに目当ての串焼き屋へ向かった。
ほぼいつも通りの2つ手前の駅を過ぎたタイミングで席を確保したとの電話を店側から受けていた。

駆け足で暖簾をくぐる。
いつものように焼き物を注文し、日付が変わる頃まで焼酎をストレートで何杯も喉の奥へと流し込む。そしてこの店のレバーは今日も蕩けるように美味だ。
この店は時に僕のように1人でカウンターで飲んでるOL見かけることも少なくないが今日は2人組ばかりだ。
このまま帰るのも悔しいと思いながらも活動する程のエネルギーは残っておらず勝負に敗れたような背中で店を後にした。

外へ出ると先ほどとは打って変わって土砂降りと化していたので駅までダッシュした。今度はさすがに傘はさした。この雨ではそれも虚しく足元はずぶ濡れだ。
出来れば傘のような不完全なものを持参しながら雨を凌いでまでの出社なんてしたくない。

しかし流石の雨量に怖気ずきタクろうかと考えたが一瞬でその思いは失せた。
広い駅の構内を横断するように長いタクシー待ちの列がそこにあった。
北側から南側の出口を結ぶように1h近く並んで乗れるか微妙なほどの長い列だ。
きっとその頃まで待てば大通りで流している空車を拾えるのだろう。
そして記念すべき誕生日は日付けが変わり寂しく終わりを迎えようとしている。
歳をとることなんてめでたいと言える歳でもないのだが年一のイベントを終えようしていると思えば名残惜しくはあった。

今日はとことんついてないと、改めて肩をおとしてぐるりと駅構内を見回した時、一人の女性の姿を視界が捉えた。
タクシーを並ぶ列から少し離れた場所にその女性は居た。
太い柱に縋りその長い列を眺めている。
何より目を惹くのはそのずぶ濡れ具合だ。
きっとこの不意の土砂降りの雨にやられたのだろう。
雪ん子のように手を重ねて震えながら巻き物を頭から覆っていた。

この駅付近のかっても知らない様子に見て取れた僕は親切心からその女性に近寄り声を掛けた。
「あ、傘を持って出かけるのを忘れてしまった人ですね!」
「そうです…(苦笑)」
「タクりたいけどこんな列並んでいられねーって人ですね!」
「えぇ、まぁ…。 ってか私だけこんなに濡れてて恥ずかしいです…」

いつもならこうしながら1杯飲まないかと誘う僕ではあるが、彼女のずぶ濡れ具合いから早くタクシーに乗っけてやりたいという思いが先で我ながら下心は皆無であった。
「これ並んでたら1hかなぁ…」
「えー、でもやっぱりそうですよね…」

そうは言ったがタクシー乗り場はここだけだっただろうか。僕はふと冷静に思い直してみた。
そうだ、通りを越えたバス停に並ぶ格好で道路沿いにもタクシー乗り場がある。
屋根がないからかそもそもあてにしていないのか存在自体を知らないのか、そちらはせいぜい5名程の列に過ぎず、次から次へと空車がつけては列の人々を拾って行く。
「傘いるけどこんなに並ばないタクシー乗り場がバス停の並びにある。入んな、着いて来て」
「えー本当ですか???凄い助かるー!」

僕は彼女を傘に入れて駅から少し離れる方向に歩いた。
「しかし…(笑)」
「え???」
「濡れたねぇ…(笑)」
「やっぱり目立ちますよね…。最近変な天気多くないですか?今日は本当にNonケアでした」
「まぁオレも職場の誰かのビニ傘だけどねー」
「あ、これ人のなんだ(笑)」

通りを渡ってバス停の方へ歩いた。
その並びのタクシー乗り場には安定的に5人程の列ではあるがそこに近づく間にも目の前で立て続けに2人程それぞれ空車に拾われて行った。
あの列のヒト達は本当にここのことを知らないのだろうか。ヒトに釣られた思い込み程無駄なものはない。それかそもそも乗る気が無いのではないかとさえ思える。

「ね?あっち並ぶのアホくさいでしょ?
何でこう極端なんだろうね」
ここからなら直ぐ乗れるという認識をしてもらいつつ、列に加わらずに少し談話したくなったので傘を握る僕が足を止めるとその女性も違和感なく足を止めて会話に応じてくれた。
雨は依然降り続けているが既に小雨程度に治まっていた。
ズブ濡れで傘の無い状況という弱みに付け込んだつもりは毛頭無かったが、掴みが悪くないというより寧ろ良いと感じた僕は何だかこのまま放流するには少し惜しい気がし始めていた。
何より踏んだり蹴ったり不運続きの今日の話をダレかに話したかった。そう女子のように。

「職場はどこなの?オレ今は渋谷だけど」
「私は南青山だよ」
「おお近いね。何やってる人なの?」
「アパレル関係だね。販売するわけじゃないけどあの辺そういう事務所が多いよ」
どうりでズブ濡れでありながらも綺麗に上手くまとまってるわけだと僕も合点した。
「飲んでたの?」
「うん。お店入る時は降ってなかったのにね」
「オレも飲んでた会社の人と飲んで、その後駅前で一人で。ってか聞いてよ、今日会社のレセプションだったのに、取引先のミスでそこから呼び戻されたんだよ。良いホテルの食事に口をつけようとしたタイミングで!本当あっけらかんとしてやがるし殺意を覚えた」
「えー。そういう時の呼出しは嫌だね。テンション下がる」
「ったくそうだよ。よりによって誕生日の日に!」
そうだ、今日は僕の誕生日だったということを忘れかけていた。
元々自分が誕生日なのにという思いからイラついていたことすらも忘れていた。
気付けばもう日付は変わって前日の話と化している。
「ん?今日誕生日なんだ!おめでとー!そして親切にしてもらって有難う(笑)」
「そうだった、自分の発言で思い出した。よほど腹立ってたんだろうな(笑)」
「せっかくおいしいもの食べれるはずだったのにね」

閃いた。
「ってかさ、飲んだ帰りだろうし腹いっぱいだとは思うんだけどさ、一杯だけ付き合ってくれない?もう日付変わっちゃってるけどこのまま誕生日終えるのかと思ったら今更ながら切なくなってきた…」
「まぁタクシー乗って帰るだけだし、少しで良ければ付き合うよ。親切にしてもらっちゃったし!」
「何か最後の最後に救われた気がする。じゃぁもう一度北口の商店街の方戻って良い?」
「オッケー(笑)」

今日ほど誰かの置き傘を持って出て来て良かったと思える日は暫くないかも知れない。僕達は取り敢えず駅の逆っ側へと2人で並んで歩いて戻った。
テンションが上がったついで、ドサクサ紛れに手をつないで相々傘で歩き始めたが意外に2人のテンションが乖離していなければしっくり来るもんだ。
どうせなら入ったことのない店に入てやろうと既に僕は呼び戻しのコールを取る前のテンションに戻っていた。
オトコは皆単純だ。きっと僕だけではない。


この後僕は誕生日の夜にふさわしい貴重な体験をすることになる。
オープンからクロージングまで僅か2時間半のコスパ最強体験の続きをnoteのマガジンでお楽しみください。
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